日時:2023年10月14日(土)17:00~18:30
会場:レンタルスペースeat(大分市)
参加者:10名
事務局の江藤です。第136回・BunDoku読書会を開催しました!今回は初参加の方3名を迎え、10名での開催となりました。
課題図書は、イタリアの小説家アントニオ・タブッキの代表作『インド夜想曲』。失踪した友人を探す主人公がインド各地を旅するうちに幻想的な世界にふれるミステリー仕立ての小説です。
エピグラフには、モリス・ブランショの言葉が引用されています。「夜熟睡しない人間は多かれ少なかれ罪を犯している。彼らはなにをするのか。夜を現存させているのだ」
そこから「夜が現存するとはどういうことか」「『インド夜想曲』というタイトルやナイチンゲール(夜鳴鶯)というキーワードから、夜は音として現存するのではないか」「この作品は聴覚で読むといいのではないか」という意見が出ました。
いちばん言及が多かったのは「僕を探すことで、自分自身を探しているといえばいいのだろうか」という一節でした。この作品をいわゆる「自分探しの旅」として読む解釈が多く語られました。
作品のキーワードとして、マーヤー(幻影)、アトマン(魂)、カルマ(宿命)も話題になりました。カルマが普遍的に(いつでもどこでも)成り立つのに対し、アトマンは特殊的に(いつかどこかで)成り立つものだといえるでしょう。
自分探しというときの自分を普遍的なものと考えてしまうと、それを探すのはやはり難しいと思います。一方で、特殊的なもの、すなわち特定の時間、特定の場所で成り立つものだと考えたらどうでしょうか。いつかの時間、どこかの場所に出向く営みを旅とするならば、旅の中で自分が見つかるのかもしれません。
そのほか「結末の一節から第5章につながるのではないか」「第5章と第6章で視点人物が入れ替わっているのではないか」など、作品の円環構造や入れ子構造に着目した指摘があって、目から鱗の面白い会になったと思います。
ご参加いただいた皆さま、楽しい時間をありがとうございました。またのご参加をお待ちしております!